一人暮らしをして二年目の冬。
繁華街の中にある小さな花屋を見つけた。
小さな蕾を付けたピンクのかわいい薔薇と目が合った。
赤いエプロンをした花屋の店員は
「この薔薇はとてもデリケートで、ひとつ花が咲けば恋も実ると聞いています。」
と夢みたいなことを言った。
夢みたいな事でも信じた私は
鉢を持って帰った。
その日から
水を与えて
「恋が実りますように」と
花の蕾に声をかけた。
数日後の朝
ピンクの薔薇は微笑んで
「ほら蕾!」
と言っているかのように
私の目に飛び込んだ。
私は「優しい」気持ちで
薔薇に話しかけた。
3つ目の蕾がついたある日。
公園でパンジーの黄色い花が
揺れているのに気がついた。
次の日の朝、子犬を連れて
パンジーに近づいた私は
はっと した。
黄色い蕾をつけていた。
すると、いきなり
小さい羽をつけた妖精が
両手を振って消えた。
次の日も妖精を見ようと
パンジーに近づいたが
待っても待っても現れなかった。
窓辺のピンクの薔薇の蕾は
夢の花を咲かせた。
赤いエプロンの花屋の店員に
「恋が実る薔薇」を見せた。
だが、妖精の話はしなかった。
薔薇の代わりに
メッセージカードと
黄色いパンジーの鉢植えを
プレゼントされた。
窓辺のピンクの薔薇の隣に
黄色いパンジーを飾った。
その日の夜、夢の中で
あの妖精が現れた。
「目覚めたら恋の始まり!」
と言って、また消えた。
朝目覚めると
ピンクの薔薇と黄色いパンジーに
「優しく」水を与えた 。
忘れていた
メッセージカードを開いた。
そこには
「優しいあなたとお付き合いしたいです。」
赤いエプロンの店員からだった。
あれから1年過ぎた今
赤いエプロンをした私は
蕾に隠れる妖精と
仲良しになった。